身体活動プロジェクトについて

身体活動調査とは?

子どもたちがたくさん身体を動かすこと(身体活動)は、とても大切です。十分な身体活動は、体力の向上や肥満の防止、骨の強化につながるだけでなく、ストレスの発散やメンタルヘルスの向上にも効果があります。さらに最近の研究では、認知機能や学力の向上にも関連していることが科学的に報告されています。しかし、便利な生活環境やスマートフォンの普及などの影響で、子どもたちの身体活動量が減少しているという現実があります。昔は、日常生活の中に自然と身体を動かす機会がありましたが、今では「意識して身体活動を取り入れること」が必要なのかもしれません。では、子どもたちは1日にどのくらい身体活動をすれば良いのでしょうか。厚生労働省は、「中強度以上の身体活動を1日60分以上行う」ことを推奨しています。3メッツとは、歩く程度の身体活動の強度を指し、この推奨は「1日60分以上、歩く以上の活動を行う」ことを意味します。

ところで皆さんは、昨日、「中強度(3メッツ)以上の身体活動を何分行ったか」、正確に思い出すことができるでしょうか。振り返ってみると、意外と難しいことに気づくかもしれません。たとえば、昨日2時間テニスをしていたとしても、その間ずっと身体を動かしていたわけではないはずです。走るなどの強度の高い活動をしていた時間もあれば、座って休んでいた時間もあったかもしれません。このように、身体活動の時間を正確に把握するのは、実は簡単ではありません。これまでの多くの調査では、アンケートのように記憶に頼る方法が主流でした。しかし、記憶をもとにした調査では、どうしても正確性に課題が生じてしまいます。

そこで私たちは、活動量計という機器を用いて、身体活動を客観的に評価する取り組みを行っています。この活動量計は、3軸の加速度センサーを搭載しており、毎秒ごとに身体の動きを記録することで、座っている、歩いている、走っているといった身体活動を強度別に分類することが可能です(図1)。具体的には、参加者に活動量計を腰につけてもらい、睡眠やお風呂の時間を除いて1週間記録を行います(写真1)。このデータを分析することで、1日の中で目標値(60分以上)を達成できているか、平日と休日で身体活動量に違いがあるか、さらにどの時間帯に身体活動が多いかといった、身体活動のパターンを正確に把握することができます。調査後には、参加者一人ひとりの結果を分かりやすい形でお返ししています。また、学校全体の傾向をまとめたレポートも作成し、クラスごとの比較や他校との比較を通じて、学校の現状を「見える化」しています。このデータを活用することで、身体活動の現状を客観的に把握でき、今後の身体活動を推進する取り組みを支援するための具体的で実践的な提案を行っています。

図1 活動量計を用いた身体活動パターンの解析
写真1 活動量計装着のイメージ

写真1 活動量計装着のイメージ

活動量計を装着することで、毎秒ごとに⾝体の動きを記録し、⾝体活動を強度別(例、座る、歩く、⾛るなど)に分類することが可能です。

子どもの外遊びを科学する

「子どもたちの外遊びをする機会が減っている」この言葉を聞いたことのある方は多いかと思います。しかし現在、本当に子どもたちの外遊びが減っていることを示す科学的根拠は十分ではありません。そこで私たちは、幼稚園の自由遊びや小学校の休み時間に注目し、子どもたちの外遊びの現状を科学的に捉える調査を行っています。具体的には、活動量計を用いた身体活動の評価に加え、ビデオカメラを使用した直接観察法を用いて、子どもたちが「どこで」「誰と」「どんな遊び」をしているのかを詳しく調査しています(写真2)。この調査では、活動量計のデータと観察データを組み合わせることで、身体活動の強度だけでなく、遊びの種類(例えば、一人遊びなのか複数人で遊んでいるのか)や特徴をより具体的に明らかにします。

写真2 直接観察法を用いた外遊びの評価

また、遊び場の利用頻度や活動の種類を示した「遊び場マップ」を作成し、どのような環境下で子どもたちが活発に遊ぶのかを「見える化」する取り組みも行っています(写真3)。調査後には、各学校の外遊びの状況や外遊びを増やすための事例を含めた資料を学校にフィードバックします。この資料は、学校の遊び場環境を改善し、子どもたちがより遊びやすくなるための取り組みを進める際の具体的な参考資料として活用されています。実際、フィードバック後には、休み時間のイベントの実施や週に1回掃除の時間をなくして休み時間を増やすなど、各学校での積極的な取り組みが行われています。

写真3 子どもの外遊びを見える化する「遊び場マップ」の作成

写真3 子どもの外遊びを見える化する「遊び場マップ」の作成
※ 赤のピンは男女一緒、緑のピンは男子、オレンジのピンは女子の遊びを示しています。
大きいピンは10人以上での遊びを示しています。

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